引き継ぎ期間の身の処し方 上手に過ごすには?
会社にとって(優秀な)社員の離職は憂うべき事態です。このため、企業は㋐引き継ぎ期間の延長を求めて退社日を延ばしたり、㋑給与を上積みしてバイバックを試みたりします。
しかしあなたの入社を待つ転職先の会社の本音は、次のようなものでしょう:
㋐のケース
採用した人材が入社するまで、何か月も待てない・待ちたくない。短期間で事業環境が激変することもある。サーチ・面接・オファーにかかった時間や手間を考えれば、すぐにでも入社して欲しい。
㋑のケース
オファー時に合意した年収から、後出しで上乗せを要求されるのは不愉快だ。
今の会社と次の会社の間で板挟みになったとき、身の処し方に困る方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、引き継ぎ期間中にやるべきこと・やってはいけないことをご紹介します。「基本給50万アップを約束されたけれど、転職先のオファーを棒に振っていいのだろうか」と迷っている方や、逆に「社内規定にある引き継ぎ期間より早く転職先に入社したいけれど、どうすれば」という方も、是非お役立てください。
1. 現職の雇用契約を確認すること
トラブルを未然に防ぐためにまずやるべきは、転職先に現職の引き継ぎ期間(ノーティスピリオドとも)をはっきりと伝えることです。面接段階からきちんと言っておきましょう。面接官の勢いに飲まれてX月X日に入社できます、などとうかつな口約束をしてはいけません。
故意ではなくても、引き継ぎ期間を誤って伝えてしまうと信用を損ねることになりますし、そのつもりで動いている転職先に迷惑がかかることになりますから、ご自身で雇用契約や就業規則を事前に確認しておくべきです。
引き継ぎ期間だけでなく、競業避止や機密保持義務などの条項も見直しておきましょう(雇用契約とは別に交わす場合も多いので要注意)。そもそもライバル会社で働けるのか、クライアント企業を持っていけるのか、といった制約をきちんとチェックしておかないとトラブルになりかねません。
2. お金が全てではないと肝に銘じること
転職を決意する人の大半は、金銭だけが理由ではないと答えています。転職理由は社風が合わない、キャリアアップの機会がない、ライフスタイルに合った働き方がしたい等々、実に多種多様で複合的です。
それなのにカウンターオファーとなると途端にお金の話になってしまい、数十万のお金で転職を取りやめる人が少なくないのです。なぜでしょうか?
辞めると告げた途端に給与アップを約束された方は、一度立ち止まって考えてみてください。「なぜここまで追いつめられる前に昇給を提示してくれなかったのか?」と。
一緒に仕事をしてきた上司に認められ、引き留められて嬉しいのはわかります。しかしカウンターオファーを受けて現職に留まった人の85%は、一年以内に結局会社を辞めている、という統計があります。カウンタ―オファーは一時しのぎであってハッピーエンドにならないということを肝に銘じておいてください。
3. 上司の立場も汲むこと
部下が「辞めたい」といえば上司は少なからず驚いたり、動揺したり、後任を探すのが面倒だと反射的に考えたりするものです。「次の会社のことで頭がいっぱいの部下にいつまでもいられても困るが、残ったメンバーに過剰な負荷がかかるのは避けたい」。この二点をどうトレードオフするか、というのが上司の本音ではないでしょうか。
できるだけ上司が困らないよう、移行を円滑に進める段取りを示してあげましょう。結果、ノーティスピリオドを短縮できるかもしれません。今まで担当していた業務のマニュアルを作成する、次の担当者をアシストする、後任者探しを手伝うなど、できる限りのことを提案してみてください。求人広告の作成を申し出るのも一案です(求人票やジョブディスクリプションのテンプレートはこちらからどうぞ)。
上司が無理難題ばかり突き付けてきたら、本当に辞めてほしくないんだなとポジティブに捉えておきましょう。
4. 退社日を交渉する場合はきちんと準備をして臨むこと
上司や人事に引き継ぎ期間の短縮を掛け合う場合は、以下の点に注意しましょう。
- 引き継ぎ計画を書面で提出すること(退職予定日も明記)
- 未消化の休暇も計算に入れること
- 最後まで礼節を尽くし、失礼のないふるまいを心掛けること(後日ばったり同僚と会っても恥ずかしくないように!)
- 引き継ぎ書は業務/プロジェクトごとの後継者や、各タスクの引き継ぎ見込み期間も含め詳細に記すこと
5. 交渉が思い通りにいかなくても焦らないこと
引き継ぎ期間の交渉が期待通りに進まなかったとしても、落ち込むことはありません。上司には毎日進捗を報告し、予定よりも早く引き継ぎが終わる見込みがあれば、再度交渉することもできます。
6. エグジットインタビューは誠実に
退職者に対してエグジットインタビューを実施する会社もあります。離職理由を分析し、定着率の向上や企業文化の改善に役立てるためです。
エグジットインタビューでは退社理由を隠す必要はありませんが、愚痴や恨み言は慎み、建設的な発言を心掛けるようにしましょう。いつどこで同僚に出くわすかわかりません。最後まで礼儀を乱さないことが大切です。
まとめ
引き継ぎ期間は今の会社にも完全には属さず、まだ次の会社の社員でもない、宙ぶらりんな時間です。しかし何があっても前向きな気持ちを持ち続け、今まで通りに業務をこなし、プロフェッショナルな態度を忘れないようにしましょう。次の会社はあなたが入社するのを首を長くして待っていてくれるはずです。
また万が一、待ってくれないときはくよくよしても仕方がありません。ご縁がなかったと割り切って、再び前を向きましょう!